わかりやすく伝えるよりも大事なこと

NHKの「クローズアップ現代」で、
去年3月まで23年間キャスターを務めてきた
国谷裕子氏の著書
『キャスターという仕事』を拝読しました。


出典:https://www.amazon.co.jp/

本書の中で
「わかりやすく伝えるよりも大事なこと」として、
国谷氏が指摘していた考え方を
皆さんにもぜひお伝えしたく、ご紹介します。

私は
NHKでキャスターを務めていたとき、
国谷キャスターが講師を務める研修を受けました。
それ以来、憧れの先輩の一人として
追いかけてきました。

スピーチ研究を始めてからは、
国谷キャスターのVTRを
研究材料として分析してまいりました。

「クローズアップ現代」最終回の放送についても、
「NHK式」の信頼性の高い話し方として
敬意をこめて分析させていただき、
このブログでもお伝えしたこともありました。

http://authenty.co.jp/blog/archives/1854

今回は書籍という形で、
国谷氏がどのような思いで
キャスターとして番組に関わっていたかを
ご自身の言葉で語っています。

そのなかで特に印象に残ったのがこの言葉。
わかりやすく伝えるというよりも、
きちんと伝えたい

国谷氏は
「わかりやすく伝えることは
本当に視聴者のためになるのか?」
と疑問を投げかけます。

わかりやすい伝え方に慣れてしまうと
わかりやすいものだけにしか興味をもてなくなると、
その危うさを指摘しているのです。

そして、
問題の深さや複雑さがきちんと伝わるようにするため、
言葉の使い方に力を注いだ

さらに
「前説の中でポイントになるところは、
きちんと私の正面の顔に映像を戻してほしい
と注文した。
視聴者にフェイス・トゥ・フェイスで伝えたかった。
思いを伝えるためには
目線を合わせて話すことが大切だと思っていたのだ。
と語っています。

(※前説とは番組冒頭のおよそ2分の
キャスターによる挨拶や解説)

言葉で伝えることの難しさに向き合いながら、
言葉の力を信じて伝える。
国谷氏の真摯な姿勢に頭が下がります。

キャスター・アナウンサーという仕事を
している方々はもちろん、
言葉を使う職業の方々全てに
絶対にお読みいただきたい一冊です!

言葉の力を信じながら伝えるとはどういうことか。
その仕事に携わっている厳しさ、そして幸せを
再度見つめ直すことでしょう。

『キャスターという仕事 』(岩波新書)
国谷裕子 (著) 2017年1月出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4004316367/

さらに興味深かったのは、
本書で国谷氏が
言葉を使う際に大事なこととしてあげていた条件が、
別のスピーチで小泉進次郎衆議院議員が
語っていた条件と同じだったことです。

こちらについては
次回またあらためてお伝えしますね。