菅首相の施政方針演説 真似したい上手いポイントもあります

今月18日、通常国会が召集され、
菅義偉首相が施政方針演説を行いました。

出典 https://www.facebook.com/sourikantei

ニュース報道やSNSなどを見ると
この演説内容については
色々な意見があるようですが、
スピーチスキルだけみると
「上手いポイント」もあります。

今回は、この施政方針演説の中で
私たちが真似すると良いポイントを
お伝えします。

実際のスピーチ動画は
首相官邸の公式サイトをご覧ください。
https://bit.ly/3szMo13

******************************************
スピーチスキルは事前に「仕込む」
******************************************

今回の演説を動画で見ていた私は、
冒頭に菅首相が行ったある行動から
「あ、今回はもしかして
あのテクニックを使うのかな?」
と期待しておりました。
すると…ばっちり使ってくれました!

そのテクニックとは何か。
それは、「間(ま)」をとることです。

そして、
冒頭に菅首相が行ったある行動とは何か?
それは、演説に入る前に
用意してあった水差しから
コップに水をつぐ行為です。

菅首相は11秒かけて
ゆっくりと水を注いだあとに一礼し、
スピーチ原稿を読み始めました。

この「水を飲む」は、
拙著
『たった一言で人を動かす 最高の話し方』
で、「間(ま)のつくり方初級編」として
ご紹介した方法です。

聞き手に伝わるスピーチをするためには、
間(ま)は重要なスキルです。

とはいえ、
黙って間(ま)をとるという方法は、
スピーチに慣れている人でも緊張するもの。

そこで、
同書では初心者でもできる方法として、
間(ま)をとりたいタイミングで
動作を入れることをおすすめしました。

そして、
スムーズに間(ま)をとるためには、
今回の菅首相のように
演説に入る前に水をついで
仕込んでおく必要があります。

ベッドボトルなら、
蓋は一度開けてから再度閉めておきます。
飲もうとしたときになかなか蓋が開かない
ということがあるからです。
いずれにしても、事前の準備が大事なのです。

では、
菅首相がおこなった間(ま)のとり方を
具体的にみていきましょう。

--------------------
1.拍手を待つ間(ま)をとる
--------------------

スピーチの始まりは、
新型コロナウイルス感染症対策への
決意表明でした。

動画の2分13秒あたりです。
「難局を乗り越えていく決意であります」
というところで、
まっすぐ前を見て声のトーンをあげていき、
拍手を促します。

そして、
次の「今回、緊急事態宣言を発出しました」
という言葉の前に約8秒の間(ま)をつくり、
沸き起こった拍手が静まるのを待っています。

あらかじめ
拍手が起こりそうなところを想定しておき、
そこに間(ま)をつくるというスキルです。

仮に、拍手が起こらなかったり、
反応がなかったりしたときは、あえて
「あれ?ここは拍手するタイミングですよ」
などと言って笑いをとっても良いでしょう。

--------------------
2.水を飲むことでロングの間(ま)をつくる
--------------------

菅首相は、
15分13秒から、水を飲むことで
8~9秒の間(ま)をつくっています。
これは同書でも解説している
「ロングの間(ま)」です。

ただ、水を飲む場所が
もっと効果的な場所であればと、
少しもったいない間(ま)のとり方でした。

効果的な場所とは、
話の転換箇所、つまり区切れです。

今回の演説は全体で44分間あり、

1)新型コロナウイルス対策
2)東日本大震災からの復興、災害対策
3)我が国の長年の課題に答えを
4)地方への人の流れをつくる
5)少子化対策と社会保障の将来
6)外交・安全保障
7)おわりに

という7つの章立てになっています。
その各章の中に
いくつかの節があるという構成でした。

菅首相が水を飲んだ15分13秒あたりは、
第3章「我が国の長年の課題に答えを」の
第2節目と第3節目の間。

話の句切れではありましたが、
同じ章内でした。
章の区切れで意図的に水を飲めば、
よりよかったのではないでしょうか。

(※ちなみに、
 19分53秒に水を飲んだシーンは
 話の句切れではないため、
 拍手が起きた間(ま)を使い
 喉が渇いたので飲んだという感じが
 否めません。

 はやぶさ2のカプセルの帰還という
 明るい話題でもありますから、
 やや残念でした。)

水を飲むタイミング は、
一つのテーマを話し終えた区切りです。

水を飲みながら
ロングの間(ま)を入れることで、
聞き手は今までの話を整理でき、
次のテーマへの期待も高まります。

原稿を読む場合は、
「ここで水を飲む」など書きこんでおくと
良いですね。

また、33分53秒あたりで、
噛んだあとに
水を飲んでいる場面もありました。

菅首相は、こうした失敗の立て直しのために
水を飲んだようですが、
(もちろんこの方法もスキルの一環です)
意図的に間(ま)を取るために
使うこともできるのです。

今回は水を例に挙げましたが、
他にも資料やホワイトボードなどの
道具を上手に使えば
間(ま)をとる場所、
長さをコントロールできます。

簡単にできることですが、
知っているのと知らないのとでは大違い。
ぜひお試しください。

★「間(ま)」をコントロールして
聞き手を動かすスピーチスキルを
身につけましょう。
基礎編
https://bit.ly/3sSQnG7
実践編
https://bit.ly/36cVYxj


******************************************
あとがき
******************************************

今月21日(日本時間)、
ジョー・バイデン氏が
第46代アメリカ大統領に就任しました。

NHKニュースのサイトに、
このような記事が掲載されています。

「『きつ音』の大統領誕生へ
アメリカ社会に希望見いだす人たち」
https://bit.ly/3iuvrR0

バイデン氏は、子どもの頃から
きつ音に悩まされていたといわれています。
その経験をもとに、
同様にきつ音に悩む人たちと交流を続け、
アドバイスを送っているとのこと。

そして、
大統領就任式で自作の詩を披露し、
世界中から注目されることとなった
アマンダ・ゴーマン氏。
彼女も言語障害を乗り越えてのスピーチ
だったと報道されています。

実際の動画はこちらです。

https://www.youtube.com/watch?v=_2vh_mz9AEA

こうしたエピソードによって、
「スピーチは誰でも訓練すれば上達するもの」
という考えが広まることを期待しています。
「スピーチが重視されるアメリカ社会」
だけでなく、日本でも。

そして大事なことは、
その正しい訓練法も一緒に広まること。

「よし、 私が広めるぞ!」
と決意を新たにしています。

遅くなりましたが、
2021年もどうぞよろしくお願いします。

★あなたの話し方を
ビジネスの武器に変えるために
必要なのは正しい理論です。
『「人を動かす話し方」を身につけるための
 教材専門オンラインSHOP』
https://bit.ly/3t4F4e6


2021年1月25日