相手を納得させる表現力を身につける方法

新年度が始まり、
私が研究室を構える大学にも
大勢の新入生が入学してきました。

その初々しい姿に、
こちらも気分が新たになります。

私が担当する講義の中の一つに
大学に入学したばかりの
1年生向けのキャリア科目があります。

その講義では冒頭にこう問いかけます。

「キャリアを日本語に言い換えたら?」

そこには、
学生たちに学んでほしい
ある狙いがあります。

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「納得解」を導き出す
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言葉の意味を自分の言葉で再定義する。
それがその狙いです。

すでに日本語として使われている英語や
日本語であっても意味が分かる簡単な言葉ほど
つい分かったような気分になって
安易に使ってしまいがちです。
しかし、それはとても危険なことです。

例えば、今回の「キャリア」という言葉。

辞書で引くと
「キャリア」=「経歴」
「専門的技能を要する職業についていること」
などと記載されています。

学問的には
「キャリア」=「人生」「生き方」「轍」
などと定義されています。

そのような「正解」はさておき、
自分は「キャリア」をどう定義するのか?

いま一度、単語に込められた意味を
自分なりの言葉で考えてほしい。
そういう意図から、
学生に問いかけをしているのです。

これまでに
学生からいろんな答えがあがりました。

「キャリア」=「自分の物語」
「キャリア」=「今までの、
        そしてこれからの俺」
「キャリア」=「可能性」

その理由を聞くと、
どれも「なるほど」と思うものばかり。
いわゆる「納得解」です。

本年度の講義でも、
秀逸な「納得解」に出会いました。

「キャリア」=「電子の穴」

これは工学部の学生の意見。
同じく工学部の学生からは、
「あ~」という賛同の声が上がった一方で、
根っからの文系人間の私は、
意味がわからずフリーズしてしまいました。

「キャリアとは電子の穴のようなものである」

この定義に込めた思いを、
その学生に解説してもらいました。

そして「深い!」
と思わず唸ってしまいました。
これまでの回答で、
私の中で3本の指に入るヒット作でした。

普段何気なく使っている言葉を
いったん自分の言葉で定義し直して
話してみる。

自分の考えた定義は
独りよがりでなく、周りを納得させる
「納得解」となっているのか。

こうしたとらえ直しを丁寧にしていくことで
言葉に対する感覚が磨かれ、
相手を納得させる表現力が高まるのです。

皆さんも自分が日々使っている言葉を見直し、
自分の言葉で再定義してみませんか?
正解ではなく納得解を導くことができたら
伝えた相手も必ず納得してくれるはずです。

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2019年4月16日