つれづれ

俳優Nさんが遅刻時に使っていた上品な謝罪フレーズ

先日、美容院で偶然耳にしたある方の
言葉遣いに心を動かされました。
私より後に美容院に入ってきたその方は、
どうやら予約時間より遅れて来店したよう。

「申し訳ございません」と
お店の方にお詫びをしていました。

そのあとに続く謝罪フレーズがとても上品で、
客室乗務員か接客業の方、
しかもVIP担当の方かしらと
思わずお顔をチラリと見ると、
俳優のNさんでした。

原田マハさんの小説が原作の映画では、
日本初の女性総理役を演じた
私も大好きな凛とした女優さんです。


出典:https://www.toei.co.jp/movie/details/1222406_951.html

今回はその時のエピソードをもとに、
少しの違いで好印象を与えられる
表現についてお伝えいたします。

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少しの違いで印象が変わる、日本語の奥深さ
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Nさんは、まずは開口一番
「申し訳ございません」と
穏やかで礼儀正しい話し方で
美容師さんに謝罪。

美容師さんはNさんに、
開始時間が遅れる分、終了時間も遅くなるが
予約内容のままのメニューで良いか
どうか尋ねました。

Nさんの答えは「YES」。
予定どおりの施術を希望されました。

こんなとき、
「YES」の趣旨を伝えるため、
あなたならどう答えますか?

「はい、いいです」
「はい、大丈夫です」
「すみません、
そのままの内容でお願いします」

など、いろいろな言い方があるでしょう。

Nさんの返答はこうでした。

「よろしいでしょうか。
ありがとうございます」

感謝とともに語られた、
この「よろしいでしょうか」という言葉。
丁寧な印象を与えますね。

美容師さんによると、
Nさんは、その美容室に通って
10年以上になるそうですが、
最初から変わらずいつもこのような
丁寧な言葉遣いだそうです。

付き合いが長くなってくると
言葉遣いが変わる方も多いなかで、
(それはそれで別の目的があれば良い工夫です)
さすが日本を代表する俳優の一人である
Nさんらしい、相手への敬意を忘れず
一定の距離感を保った自己表現だと
感銘を受けました。

さて、
「よろしいでしょうか」と似たような
フレーズですが、
これが「よろしいですか」だと
どうでしょう。

「よろしいでしょうか」と
「よろしいですか」は、
どちらも相手への許可を求めるフレーズです。

「です」は断定の表現ですから、
許可を求める側の希望が
前面に出ている印象を与えます。

一方、「よろしいでしょうか」は、
「でしょう」という
推量の意味を含んでいる分、
判断を相手にゆだねる印象を与えます。

そのため、より丁寧な表現となり、
「自分が遅れてきたのに申し訳ない」
という謝罪の意味も込めることが
できるのです。

では、もうひとつ。
「よろしいでしょうか」「よろしいですか」
と似たフレーズで、
最近よく聞かれる
「よろしかったでしょうか」はどうでしょう。

「よろしかったでしょうか」は
過去形ですので、確認の意味を含みます。

例えば、前もって注文されていたものを
渡す際に、
「こちらでよろしかったでしょうか」と、
尋ねるような場面で使います。

しかし、
お客さまを席に案内する時に
「こちらでよろしかったでしょうか」
などと、現在起きていることに対して、
過去形を使って尋ねるのは誤用となります。

NHK放送文化研究所によると
「よろしかったでしょうか」は、
「不用意に連発すると、
『自分はこう考えているけれど
それでいいよね』
という、やや押しつけがましい印象を
与えかねません」とのこと。

丁寧に話しているつもりが、
誤った使い方をすると
逆効果になることもありますので
要注意です。

「よろしいですか」
「よろしいでしょうか」
「よろしかったでしょうか」

同じようなフレーズですが、
少しの違いで、
相手に与える印象は変わるものですね。
Nさんのおかげで、日本語の奥深さを
再確認したエピソードでした。

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あとがき
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今年も残すところ2カ月あまり。
店頭でも2024年の手帳特設コーナーが
目に付くようになりました。
あなたはもう購入されましたか?

私は例年と同じ手帳のリフィルを
購入しました。
すでにご依頼いただいた講演や、
来年度の講義予定を手帳に記入していると、
すでに気分は2024年。

年末の仕事納めや、来年の年頭挨拶に向けた
スピーチトレーニングご依頼も
増えてきました。

一気に慌ただしい気分ですが、
こういうときこそ
残り少ない2023年の一日一日を
大事に過ごさなければいけませんね。


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2023年10月26日


人は「話し方」であなたを区別する

新型コロナウィルスの
新たな変異株の懸念もありますが、
感染症対策をしたうえで
だんだんとイベントが開催されるように
なってきましたね。

私も、2年ぶりに帝国劇場へ。
ミュージカル『マイ・フェア・レディ』を
鑑賞してきました。
https://www.tohostage.com/myfairlady/

帝国劇場は、1911年に
日本初の西洋式劇場として建設されました。
その発起人の一人に、
今年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の
主人公である渋沢栄一も名を連ねたそうです。

感染対策のため
以前とは違うルールが多々ありながらも、
こうしてまた舞台を見られることに感謝しつつ
久しぶりの舞台を楽しみました。

やり直しがきかない一発勝負という点や、
発信する側と受け取る側が
時間と空間を共有するという点で
舞台とスピーチは似ています。

ですから、
私にとって舞台はスピーチのための勉強の場。
スピーチがうまくなりたいという方は
ぜひ劇場に足を運んでみてくださいね。
何かヒントを得られるはずですよ。

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人は『話し方』で区別する
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今回私がみた
『マイ・フェア・レディ』は、
日本で初めて上演された
ブロードウェイミュージカルです。

下町で花売りをしていたイライザと、
彼女に話し方のトレーニングをする
言語学者ヒギンズの物語で、

1963年の初演以来、
繰り返し上演されている不朽の名作。

オードリー・ヘップバーン主演の映画
『マイ・フェア・レディ』を
ご覧になったという方も多いことでしょう。

当時の言語学者が行っていた
話し方のトレーニングは、
現代でいうと
スピーチコンサルティングですね。

今回の舞台で私が一番衝撃を受けたのは、
ヒギンズ教授が歌った
『Why Can’t The English?』という曲の歌詞。

「人は人を『話し方』で区別する。
なのに、なぜ人は学ぼうとしないのか」
「話し方に無頓着」

この歌詞は、
まさに
私がお伝えしたいこと、そのもの!

裏を返せば、話し方を学べば
与える印象は変えられます。
「なのに、なぜ人は学ぼうとしないのか」です。

イライザも話し方のトレーニングを
受けることによって
運命が変わっていくのです。

舞台をきっかけに、また映画もみたくなり、
再度映画『マイ・フェア・レディ』も見ました。

 

当時は、
イライザ役のオードリー・ヘプバーンの
美しさばかりに目がいったのですが、
今回はスピーチコンサルタントという職業柄、
ヒギンズ教授の言動ばかりに
目がいってしまいました。

中でも印象に残ったのが、
なかなか上達しないイライザに
ヒギンズ教授が発する言葉。

「人の心から優れた思想を引き出し、
類いまれな想像性をはらむ音楽的言語。
それを君は制服しようとしている」

この「言語」の魅力を解説した台詞、
今回の舞台では
「言葉の尊厳」
「人間の偉大さ」
「人間的な知の集合体」と訳されていました。

私もヒギンズ教授のように、
言葉や話し方の大切さを
もっと発信していかなくてはと
来年2022年の目標になりました。


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2021年12月27日