オバマ大統領の広島訪問でのステートメントを分析

2016年5月27日、オバマ大統領が
米国の現職大統領として初めて
被爆地広島を訪問しました。

hiroshima
出典:内閣広報室/首相官邸ホームページ
(http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201605/27hiroshima.html)

このことは歴史的訪問であると各メディアが報道。
その報道を目にされた方も多いことでしょう。

一方で、両首脳によるステートメントは、
様々な受け止め方がありました。
「核なき世界」に向けた決意表明であると評価する
肯定的な意見。

謝罪の言葉がないことへの不満、
「核なき世界」の実現にむけた
具体策がないといった批判意見。

様々な意見があるのは当然ですが、
今回のメルマガでは、主義主張はさておき
オバマ大統領のスピーチについて純粋に分析します。

政府インターネットテレビでは
動画が公開されています。
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2016/0527hiroshima.html

オバマ大統領のスピーチ全文の日本語訳は
時事ドットコムニュースでもご覧いただけます。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016052700992&g=pol

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一番の特徴は主語の使い方です。

「われわれ」「私たち」という言葉を
計37回使っています。
主語の使い方には話し手の狙いが見てとれます。

誰と誰を「私たち」とするかで
どの立ち位置から話をしたいのか、
人間関係が明確になります。

「10万人以上の日本人の男性、女性、子どもたち、
数千人の朝鮮人、十数人の米国人捕虜を含む
死者を悼むために来るのだ」

という部分に、注目してください。

「私たち」として、被害者に
広島の日本人だけでなく
朝鮮人、米国人捕虜を含めることで
アメリカを敵とする人間関係を回避しています。

そして、人類共通の敵を
「核」だと印象づけているのです。

「日本人」「広島」「長崎」は
計11回も使っているのに
アメリカという言葉は
たった1回しか使っていません。

しかも、「米国と日本は同盟を構築」
というポジティブ文脈でのみ使っているのです。

あとはすべて
「われわれ」「私たち」という表現にしています。
「誰が悪いのか」という論戦にならないよう、
意図的に、でもさりげなく問題をすり替えています。

これは2008年の大統領選挙の時に
オバマ氏が繰り返し口にしていた
“Yes, we can”と同じ構造です。

共通の敵をつくり、
「私たち」という表現で仲間にしてしまう手法は、
ドイツのヒトラーも使っていました。

良い悪いではなく
世界のリーダーは必ず使う
スピーチ手法のひとつです。

私たちも、スピーチを行う際には
自分がいま主語を誰にしているのかを
意識しながら話していきましょう。

とくに日本語は、主語を省略して話しても
通じる言語ですから要注意です。

主語を意識することで
メッセージ性が高まります。

皆さんも、リーダーとして人々をまとめて
一致団結したい時にぜひ活用してみてください。